砂の棺

白い砂と高い岩山に囲まれた国ウラウロー。
傭兵を生業とする青年カルザスは、ある日、謎めいた美麗な詩人シーアと出会う。
この出会いをきっかけに、ウラウロー全土を巻き込んだ過去から連なる歴史と謎が紐解かれ、
彼らは運命に翻弄されゆく。


     3

 異常に体が冷たい。凍えているのではなく、服の上から冷水を被ったかのようなベタリとした感覚。湧水のある町ならともかく、シーアを見つけた砂漠の真ん中に、そのような大量の水などあるはずがない。
 鼻をつままれても分からぬような暗闇。ここは一体どこだ? カルザスは流砂に飲まれたのではないのか? 灯り……灯りはないか?
 俺がそう思った矢先だ。
 どういう仕掛けなのか分からんが、周囲が一瞬で明るくなったのだ。まるで壁や床自体が発光したかのようだ。魔法──という単語が一瞬脳裏をチラついたが、ここはウラウローだ。エルスラディアではない。おそらくヒカリゴケか、上からの光の乱反射によるものだろうと仮定する。
 流砂に飲み込まれたのだから、ここは地下なのだろうか? それとも息が詰まり、死してしまった者が訪れるという黄泉《よみ》の国だろうか?
 とにかく状況を把握せねばならん。俺は周囲を見回した。
 崩れた建物が見える。白い砂と、砕けた黒い岩が無数に転がっている。そして何より、透き通った冷たい水が足元に流れているのだ。そう、小川のように。この小川に浸かっていたために、体が冷えておるのだ。体は冷えておるが、どうやら死んだ訳ではないらしい。
 しかし驚いたな。乾いた広大な砂漠の下に、このような地下空洞があったなどとは……。
 ここはどこかと思考を巡らせておったが、ふと思い当たる節があった。あの壊れた建物には見覚えがある。
「……マリスタの邸宅。魔道帝国エルスラディア……」
 俺の意思により、それは声として発せられた。
 なっ……何だとっ?
「夢か、現実か……?」
 俺は息を飲んだ。
 俺は俺の意思で、声を発している。と、いう事はだ。俺は俺の実体に……俺の本来の体に戻ったという事か?
 慌てて手を動かすと、ちゃんとそれは動いて見えた。だが……肌の色は褐色だ。しかも見覚えのある衣服を身に付けておる。恐る恐る小川に自分の姿を映してみる。
「……カルザス……」
 カルザスの顔がそこにはあった。
 どういう事だ……俺は実体に戻ったのではなく、カルザスの体を乗っ取ってしまったというのか? そうでなければこの状況、説明がつかぬ。
 マリスタの命の消滅と共に天空より墜落し、今はウラウローの地下に眠るエルスラディア。幾度もエルスラディアの夢を見、感じ、そして今、カルザスの体を動かしている俺。
 分からぬ。俺は一体、どうしてしまったのだ。運命は俺に何を伝えようとしておるのだ。
「カルザスさん……?」
 振り返るとシーアがそこにいた。カルザスと同じく、濡れた髪と衣服が、べったりと体にまとわり付いておる。
「シーアか……お前も無事なのか?」
 不安げだった表情がみるみる強張り、シーアの全身がまるでこちらへ威嚇するかのように総毛立つ。
「……あんたは……」
 俺本来の口調で声を掛けたせいなのか、シーアが俺を訝しむ。
「待て。話を聞け。お前が疑問に思うのも無理はない。俺はカルザスであり、お前がセルトと……」
 シーアが地を蹴り、俺に組みかかってくる。その手には、丈夫な糸のようなものを持っておる。おそらくハープの弦を抜き取ったのだろう。
「やっぱりお前は人間じゃなかったのか!」
「な、何事だ! やめんか、シーア!」
 弦で腕を封じられ、鋭い蹴りが放たれてくる。しまった!
「呪縛!」
 無意識に、俺は叫んでいた。
 一瞬で力を無力化し、その場へと押し潰されるシーア。こ、これは……あの時の……あの時のアーネスと同じではないか! シーアとセムの時と同じではないか! 相手の動きを封じる、呪縛の魔法!
「てめぇっ……畜生っ……」
 魔法……マリスタの……力……。
 信じられない光景を目の当たりにし、口元を押さえようとした俺の指先は、奇妙な感触の物に触れた。恐る恐る頬を指先でなぞる。すると小さく薄く、丸いものが幾枚も張り付いたような感触があった。まるで鱗のような……。
「鱗……まさか……俺は……」
「何を今更驚いてるんだよ! 変な力使って、鱗の皮膚を持ってるなんて、あんたはやっぱり人間じゃない! あんたは十三年前におれが殺したはずだ!」
 懇親の力で体を起こし、シーアが憎悪を剥き出しにする。
「……殺しても死なない、化け物め」
「シーア、俺は……」
 俺が震える声音で、シーアに助けを求めるように口を開く。だがシーアは忌々しげに舌打ちし、ギラギラとした露骨な殺意を放ってくる。
「おれの全てとシーアを奪った挙句、今度はカルザスさんまでおれから奪うっていうのかよ! おれにっ……おれに何の恨みがあるんだよ……死に損ないのクソ親父が!」
 シーアの養父であり、暗殺者組織を総括していた先代頭目……それが俺? いや、魔導師の始祖が持つ強大な魔法の力と鱗の肌、それらから連想できる者はただ一人。
「テティス……」
 暗殺者の先代頭目とは、テティスの事だったのか?
 今、カルザスの体を乗っ取り、テティスはシーアの動きを、マリスタの魔法の力で抑え込んでおる。そしてその体と力を自在に操っているのはこの俺だ。

「……テティスなのか、俺は?」

 横面を張り倒されたような衝撃を受け、俺は酷い頭痛に見舞われる。セムを惨殺した先代頭目。アイセルを殺害したテティス。夢の中で、俺自身も嫌悪しておったあの者共の正体が同一人物で、それは俺だというのか?
 衝撃と同時に一気に流れ込んでくる、忘却の彼方から溢れ出てきた記憶の数々。マリスタの魔力の源である蟲を体内に宿す事で得た、魔導師としての知識や経験、そして能力。蟲が“ヤドリ主”として、選んだ人間の体を媒介として、永遠に生き存えるという習性。
 今のヤドリ主は……カルザスだ。
「俺は……テティスだ……マリスタやアーネスを憎み、アイセルをこの手にかけた……竜人のテティス……」
 間違いない……間違いないのだ。俺はテティスなのだ。テティスとして過ごした記憶が呼び起される。俺は……俺は最後の魔導師であるアーネスではなく、記憶を失った精神だけの希薄な存在だったセルトでもなく……テティス、いや、魔導師の始祖たる蟲本人だったのだ……。
 始祖であったマリスタの持っておった知識や経験と、俺自身のそれらが、長い年月のためか混在し、融合してしまっておる。どこまでがマリスタの記憶で、どこからがテティスの、俺の記憶なのかも分からん。そのせいなのか、今ある俺は、カルザスたちと過ごしてきた俺でなくなっているような気がするのだ。
 俺はテティスなのか、マリスタなのか、それともセルトなのか。どれもが自分であり、別人のようであり、考えれば考える程、混乱を極めてくる。まだ全てを思い出しておらんのだ。
 何を鍵としていたのか分からない。シーアの吐き捨てた言葉か、俺の行動か、何かが鍵として、失われていた俺の記憶の扉を僅かに開いたのだ。

「解呪」
 無意識だった。俺の手が複雑な動作をし、アイセル……いや、シーアの動きを封じていた魔法を打ち消した。
 なぜだっ? 俺は魔法を解こうとはしておらんのだぞ!
「……アイセル! 俺が決着をつけるまで、お前は身を隠していろ!」
 俺は俺の意思でなく、そう叫んでいた。
「えっ?」
 状況が飲み込めず、呆然と俺を見上げているシーア。い、いや、今の俺は“俺”ではない。
「アイセル。今度こそ、お前の手を掴んで助けてやるからな」
「……カルザスさんに戻ったの?」
 動かん……体が動かんのだ。もしやまたカルザスの意思が俺を押し退けて……?
 警戒しながらも、シーアが俺に近付いてくる。俺はあの日アーネスがそうしたように、シーアをアイセルとして見ながら、奴の頭を撫でてやっていた。
「今度こそ、俺が護ってやるからな、アイセル。ああ、お前は転生できないんだった。今はレニーだったな」
 シーアの表情が歪む。そして強く俺にしがみ付いてきたのだ。迷子になっていた幼児が親を見つけ出した時のような、そんな泣き顔だ。
「もう……離れないでくれよ。シーアはいない、神父もいない。おれには……もうカルザスさんしか、残ってないんだから」
「すまないが、俺はカルザスじゃない。だがお前の味方だ。安心しろ」
 くそっ! アーネスめ!
 俺は忌々しげに舌打ちする。だが今、俺の精神はアーネスに抑え込まれているため、体の自由が利かぬのだ。

 不死である魔導師の始祖たるマリスタは、自らの寂しさを紛らわせるためだけに、人間と獣の混血である俺たち獣人を作り出した。しかし獣人は長命ではあるものの、完全な命にはならず異形の姿として生まれ落ちたため、人間からも魔導師からも忌み嫌われる半端者として苦渋の生を送る羽目になった。
 俺はいつしか自分の生い立ちに疑問を持ち始め、そして始祖が隠していた事実を知った。同時に魔導師という者たちに対して深い憎悪を抱く事となる。

 魔導師が憎い。復讐してやりたい。

 そして俺は、魔導師の始祖であるマリスタの魔力を得た。魔導士の始祖たる者の魔力の源であり、始祖たる者の本体である“蟲=カブレア”を体内に取り入れる事に成功したのだ。
 俺の復讐の手始めは、人間でありながら魔導師に気に入られたという理由だけで、魔導師による様々な恩恵を被《こうむ》ってきたアイセル。人種の隔たりのない理想郷を、などとほざいていたが、奴は俺やルネを地上から救い出してやったと思い上がっていたのだ。
 そのアイセルを殺し、次の標的はアーネスとした。マリスタ亡き後は、アーネスがこの世に残る最後の魔導師であり、正当なるマリスタの後継者だからだ。アーネスさえいなくなれば、俺の復讐は完遂するはずだった。
 俺は最後の魔導師であるアーネスを狙い、何度も奇襲を仕掛けた。だが本来魔導師でない俺は、強大なマリスタの魔力を体内に宿したというのに、それを満足に扱えず、アーネスに太刀打ちできなかったのだ。
 俺は考えた。マリスタの力だけでアーネスを殺せないのなら、アーネスの魔力をも奪い取れないだろうか。力を失い、うろたえるアーネスをひねり潰など簡単なはず。
 俺の怨恨は増していた。
 あの日、マリスタの魔力を取り返そうと俺を追ってきたアーネス。俺は奴に殺されたフリをして、魔力の源であるあの蟲に俺の精神を同化させ、ボロボロに傷付き壊れかけていたテティスの体を捨てて、アーネスの精神に憑依しようと考えたのだ。生まれながらに魔導師という“器”があれば、俺はマリスタの魔力を完全に制御できると考えたのだ。
 イチかバチかの賭けでもあったが、この思惑と行動は正解だった。
 魔導師でない俺が魔法を行使すれば、生身の体はその反動に耐えられない。竜の鱗を持つ竜人としての強靭な体をもってしてもだ。強大な力を行使すればするだけ、その反動は大きかった。
 蟲と同化し、更にアーネスに同化する事で、俺はアーネスの魔力をも手に入れた。皮肉な事に、蟲の力を得てアーネスをも不死としてしまったのだがな。
 しかしアーネスの体は生まれながらの魔導師であるにも関わらず、マリスタの魔力を受け止め切れなかった。自らの魔力の許容限界値を超え、テティスであった頃の器と同じ状態になってしまった。つまり、“器”が壊れたのだ。
 最後の魔導師であり、始祖の正当なる後継者であるアーネスも、始祖の力を受け継ぐには不適合だった事が発覚したのだ。あのまま放っておいても、魔導師は滅ぶ命運にあったのだ。
 だがこのままでは“俺”は消える。アーネスに同化しただけで、復讐を果たさないまま。何のために、ここまでいろいろと手を尽くしてきたのか分からなくなる事が嫌だったのだ。
 俺は必死に考え、そしてエルスラディア最後の日、マリスタが言った事を思い出した。“刃に傷つく肉体”を持って、始祖たる魔力の制御はできないという、な。
 ならばあえて肉体を破壊し、“精神だけの存在”となれば、力は思いのままになるのではないか? 傷つく実体、つまり始祖の力を受け止めきれない壊れやすい“器”を無くしてしまえば……魔法は無限に行使できるという事ではないかと考えたのだ。
 たとえ器が壊れようと死ぬ事のできない俺は幾度も転生し、考え続けた。何か俺の意思を残したまま、俺と同化しているアーネスに復讐する手立てはないかと。
 幾度目かの転生で、俺はカルザスと呼ばれる男になった。正確には転生ではなく、すぐに壊れてしまう脆い体を次々に捨てていき、行き着いた先がカルザスだったのだ。
 しかし転生を繰り返し過ぎたために、俺と同化していたアーネスは、アーネスとして生きていたその記憶が薄れて消えてきたのだ。強い復讐に燃える俺の意思だけを残してな。
 アーネスが消えてしまえば、俺の復讐は終わる。だが俺が手を下さず終わらせてしまっては、俺の行ってきた事に意味がなくなってしまう。俺の気も晴れぬ。
 カルザスもシーアも覚えておらんが、奴らは幼き日、互いに会っておるのだ。カルザスの実家の商家へ、輸入品を買いに来た親子がいたのだ。その時カルザスはまだ赤子で、レニーは親に手を引かれた幼児だった。覚えておらんのは無理もない。
 だがすでにカルザスという赤子に憑依していた俺は、カルザスの目を通してレニーを見、愕然としていた。何の因果かは分からん。だがレニーはあまりにアイセルに酷似していたのだ。
 俺はレニーを見て思った。アイセルと瓜二つであるレニーの手で、アーネスを殺してやるのはどうかと。可愛がっていた弟の生まれ変わりに殺されるという事は、あいつにとって最も強烈な復讐になり得るだろうと思ったからだ。アイセルの生まれ変わりを、俺《アーネス》という兄の手で殺してやるより、効果的だと思ったのだ。
 アーネスは俺と同化しており、始祖の魔力の影響で不死ではある。しかし弟に殺されればアーネスの精神は壊れると思ったのだ。
 そのためには入念な準備が必要だ。このままレニーがあの親に育てられても、アーネスを殺す力は得られぬ。俺は一計を巡らせ、暗殺者としてレニーを俺の手で育ててやろうと企てた。
 そのためには一度カルザスの体を離れ、暗殺者の頭目の精神に憑依する必要がある。俺は蟲から俺の精神だけを切り離し、当時の暗殺者の頭目の精神を乗っ取った。
 偶然にも頭目は気まぐれにレニーの両親を殺しており、そしてまた、気まぐれにレニーを自分の跡継ぎとして引き取っていた。奴の見目の麗しさに、自らの薄汚い欲求が疼いておったのだろう。頭目には若い麗しい男を食い物にする、反吐が出そうな性的趣向があったからな。
 俺はレニーを完全なる暗殺者として育て上げた。シーア・セムというあの女が現れるまでは、俺の計画は順調だったのだ。
 あの女の魂の形は獣人ルネに酷似ている。それゆえに、レニーはセムに惹かれたのだろう。そしてセムもな。
 俺は計画に邪魔なセムを殺してやったが、逆上したレニーに無様に返り討ちにされ、器を失った精神体の俺は元のアーネスである、カルザスの元に戻らざるを得なくなった。マリスタの魔力そのものである蟲は、カルザスの体内にあったのだ。蟲が宿る器、“ヤドリ主”を無くしては、それがある場所へと戻らざるを得ないのだ。
 だが自由を奪ったアーネスの意思だけを残し、俺自身の手で、再びアイセルを殺してやるという事も面白いかもしれん。そう考え、俺はカルザスとしてレニーに近付くために、カルザスの体へ戻る前に暗示を掛けたのだ。カルザスはただ、運命的にレニーと知り合ったのだと思っておるようだったがな。
 しかし事故があった。
 カルザスとして存在したアーネスの体に再度同化する際、俺は俺としての記憶を失ってしまったのだ。アーネスの精神が度重なる転生で薄れ消えていったものと、同類の事故なのかもしれん。精神を器に入れる際、衝突し合って俺とアーネスとカルザスの精神が絡み合って混雑してしまったと推測される。やはり一つの体に、三つの精神を入れるには無理があったに違いない。
 俺が記憶を失い、カルザスやアーネスの精神を抑える力が弱まってしまっていたせいか、薄れていた始祖の記憶やアーネスの意識が再び表に出てきたのだ。俺の“夢”という形でな。レニーに憑依した夢を見たのは、予見の力があったアーネスのせいだろう。奴は他者の未来をある程度予見する事ができた。
 結果的にはレニーに近付く事ができたのだから良しとしておこう。
 ようやく……ようやく思い出せた。全てを、な。俺は魔導師に復習する。それで全てが終わる。終わらせる。

 今、俺の腕の中にはレニーがいる。後ろ腰にあるレニーの短剣で胸を貫いてやれば、アーネスは発狂し、壊れるだろう。溺愛している弟を殺してしまったとな。
 俺の人生を狂わせたアイセル、いやレニーも消せる。一石二鳥だ。
 俺は強く念じる。アーネスよ、失せろ、とな。
「アイセ……シーア、さん」
「……カルザスさんだよね? おれはもう何も偽らない。レニーでいいよ。何?」
 照れ笑いを浮かべながら、シーア、いや、レニーが顔を上げる。そうだ……この目なのだ。この目がアイセルと同じなのだ。
 一度心から信じた相手ならば……何の疑いもなく真っ直ぐに、純粋な目で見つめてくる。それが俺には……眩しく苦しかった。
「……どうしたの?」
 首を傾げ、じっとこちらを見つめているレニー。
 俺の手が、ベルトの後ろに差したレニーの短剣に伸びる。よし、俺の意思で体が動く。俺を苦しめるこの紫色の瞳を抉り、それから……命を絶ってやる。恨むならマリスタとアーネスを恨むのだな。
「レニー、あれは出口では……」
 俺から視線を外させようと、奴の背後を指差そうとした刹那、強い意志がそれを妨害した。そしてレニーの体を突き放す。
「あなたに害をなそうとする方が僕を操っています! 逃げて!」
 小川に浸かったレニーが勢いよく顔を上げる。小さく息を飲み、慌てて立ち上がる。
「鱗っ……さっきまで消えてたのに!」
 流れる水を撥ね上げ、レニーは崩れた建物に向かって駆け出した。
 くそっ! 邪魔が入ったか!
 どうやら俺の精神がアーネスやカルザスの精神を凌駕しておる時、この体には竜人の証である鱗が浮かび上がるようだ。奴を騙す時、このような体質は不便だな。
 俺はレニーを追い、走りながら濡れて重くなったマントを脱ぎ捨てた。

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