Light Fantasia

オウカという国には各国から腕自慢が揃う冒険者組合がある。
名(迷)物補佐官でありながら冒険者でもあるファニィ、美貌の怪力美女ジュラフィス、
健気で超天才児のコートニス、生真面目で世話やき基質のタスク。
凸凹四人組が織りなすハチャメチャファンタジー!


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 お日様が随分傾いてきてしまいましたわ。でも迷子さんになってしまったコートはまだ見つかりませんの。
 わたくしを一人にしてしまうなんて、コートはイタズラ好きのお茶目さんですわ。でもわたくし、そういった冗談は好きではありませんの。だからコートを見つけたらメッて怒ってさしあげますわ。愛の鞭ですの。そしてその後はタスクさんに作っていただいた美味しいお夕飯を一緒にいただくんですのよ。
 わたくしとコートは特別な仲良しさんですもの。

「もう日が暮れちゃうよ。どこまで行っちゃったんだろう?」
 いつもお元気なファニィさんも、少し疲れたお顔をなさっていますわ。でもわたくしもちょっと疲れてしまいましたの。おなかも空いてきましたし。
「タスクが一緒だから、コートもこっちの姿見つけるなり、サッと逃げてるのかもね」
「あ? だからなんで俺を一人悪者にするんだよ」
「あれだけ懐かれてたのに『嫌いです!』だよ? 大きな声出さないコートが『タスクさんなんて嫌いですぅ』だなんて、相当とんでもない大事件だよ?」
 そういえばコートはタスクさんと喧嘩してしまったのだと仰っていましたわね。じゃあやっぱりタスクさんが悪いんですの? わたくし難しい事を考えるのは得意ではありませんけれど、喧嘩両成敗ですわ。コートが帰ってきたら、タスクさんと一緒にメッですわね。
「とりあえず周辺の店に軽く聞き込みして、それでも見つからないようならファニィが言ってたように攫われたって線で動くべきだな。このまま闇雲に捜していても埒があかない」
「そうね。コートの特徴は……ラシナの民で大きい帽子と金髪?」
「あとカワイコちゃんな容姿とチビな」
 コートはとても小さくて可愛らしいんですの。わたくしのお膝にちょこんと座ってると、わたくしはお人形さんを抱いている気分になりますわ。お利口さんですし、とっても自慢の弟ですのよ。
 わたくしはファニィさんとタスクさんがあちこちのお店の方にお声を掛けていらっしゃるのを後ろで見ていましたの。だってわたくし、難しいお話は苦手なのですもの。こういった交渉のようなお話は、今まで全部ファニィさんにお願いしておりましたのよ。

 ファニィさんとタスクさんが手分けしてお店の方にコートの事を伺い始めて少ししたくらいかしら? わたくし、少し離れた露店と露店の隙間にチラリとのぞく青いものを見つけたんですの。
 お二人はお忙しいみたいですし、少しくらいなら、わたくし一人で行動して大丈夫かしら? わたくしは気になったそれのところへ歩いて行きましたの。
「まあ……」
 それは思った通り、コートのお帽子でしたわ。誰かに蹴飛ばされて、ちょっと汚れてしまっていますけれど間違いありません。
「ジュラ! 一人で行動しちゃ駄目じゃない!」
「ファニィさん、わたくし大発見ですわ」
 ぷんぷん怒って駆けてらしたファニィさんに、わたくしは見つけたお帽子を見せますの。
「それコートの?」
「ええ、間違いありませんわ」
 コートのお帽子は、随分前にわたくしがコートにプレゼントしたものですの。コートはそれはそれは喜んで、あれからずっと被っていますのよ。コートが気に入ってくれて良かったですわ。
 そんなコートのお気に入りのお帽子だけが落ちているなんて……落とした事に気付かずお出掛けしてしまったのかしら?
「帽子だけが落っこちてたって事は、落とした事にも気付かないくらい急いでたか、それとも拾ってる余裕がなかったか」
「どちらにせよ、なんか雲行きが怪しいな」
 ファニィさんがコートのお帽子を眺めていて、ふと怪訝なお顔をなさいましたの。そしてお帽子の内側の折り返しから、引き千切られたような糸くずの付いたボタンを取り出しましたわ。わたくし、そんなボタンには全然気が付きませんでしたの。ファニィさんは探し物がお上手ですわね。
 あら、そのボタンの模様……気になりますわ。
「ファニィさん、よく見せてくださいまし」
「これ? なんかどっかで見たような紋章みたいだけど……ジュラ、分かるの?」
 ボタンに浮き彫りにされた紋章は、ラシナ地方に咲く珍しい百合の花を咥えた鷲の紋章でしたの。
 ……思い出すのも忌々しい、グランフォート家の紋章ですわ。
 わたくしの中にふつふつと憎しみの感情が沸き起こりましたの。わたくしだって本気で怒る事もあるんですのよ。
 あの女はまだ、わたくしとコートを引き離すおつもりなのかしら? でしたらわたくし、絶対に絶対に許しません事よ!
 私がギリギリと歯ぎしりしてボタンを握り潰しますと、ファニィさんとタスクさんは驚いてわたくしを凝視しましたわ。
「ジュラ何やってんの! 唯一の手がかりなのに! ……って、もしかして知ってるの?」
「コートは……誘拐されたのですわ」
 わたくしの声は怒りで震えていましたの。
「このボタンの紋章はグランフォート家のもの。わたくしとコートの生まれた、忌まわしい家の家紋ですわ!」
「グランフォート……そうか! どこかで聞いた事あると思ってたが、ラシナの旧名家の!」
 タスクさんが驚いたようにわたくしを見ます。ファニィさんは混乱なさったお顔でタスクさんを見上げていらっしゃいますわ。
「ジュラさんとコートはあの名家の出身だったんですか?」
「許せません……許せませんわ。あの女はまだわたくしとコートを引き離すつもりでしたのね!」
「ジュラ、分かるように説明して」
「コートはわたくしたちの母に誘拐されたのですわ!」
 わたくしが憎しみを吐き出すかのように叫ぶと、ファニィさんとタスクさんは驚いたように顔を見合わせましたの。

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