風薫る君

大好きな両親と家を失った幼い深咲を救ったのは、
銀の瞳を持つ美麗の双子の“きょうだい”だった。
妖が跋扈する緋ノ国に、疾風が舞う。迅雷が弾ける。

「……必ず、迎えに行ってあげるから」


     銀色の双眸(ふたつのひとみ)

     一

 お月さまみたいな、不思議な色の瞳を持つその人たちと出会ったのは、今からちょっとだけ前。
 辺りがどんどん暗くなって、ひとりぼっちで心細くなっていた時、ずっと待ってたお父さんより先に、ひとりぼっちのあたしを見つけてくれたの。

「大丈夫。必ず……迎えに行ってあげるから」

 あたしを迎えにきてくれるって約束してくれたお父さんは、約束の場所でいつまで待ってても来てくれなかったから。
 あたしは知らない人と話すのがすごく苦手。お姉さんはすごく粗野で怖そうな人だったんだけど、でも本当はとっても優しくて、初めて会ったあたしのこともいっぱい心配してくれたの。
 でもこの時はまだ、この人たちとの出会いがあたしの人生を変えちゃうだなんて、思ってもいなかったわ。
 今は、良かったと思ってる。でもちょっとだけ、迷ってもいる。だってお父さんとの約束は、まだ果たせていないんだもの。

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